2004年11月11日

空のこども

町一番の物知りおじいさんは毎日ベンチでひなたぼっこ
ある日男の子がやってきてたずねました
「おじいさん、どうして風船は上へ上へ飛んでいくの?」
「それはな、中に『空のこども』がいっぱいつまっておるからだよ」
だから風船は――お空に帰ろう帰ろうとするんだ

次の日も男の子はやってきました、手には割れてしまった風船を持って
「ねえ、おじいさん中の『空のこども』はどこにいっちゃったのかなぁ?」
「風船が割れてしまうと『空のこども』はあちこちにちらばって――
 どんどんどんどんちらばって――地球をぐるりをつつむぐらいにちらばっとるよ
 気をつけて見てごらん、帽子が飛ばされたり、木の葉が舞ったり、砂漠の砂が舞い上がったり
 ぜんぶ、お空に帰りたがってる『空のこども』のしわざだよ」

次の年――男の子はお母さんを病気でなくしてしまいました
男の子は一人でベンチにやってきました
「おじいさん、お母さんはどこに行ったの?」
おじいさんはしばらく黙り込んでいましたが、やがて静かに話し出しました
「お母さんはどこにでもいるよ
 お母さんの体につまってた、君のことを思う気持ちは――
 体を無くしてあちらこちらにひろがって、どんどんずぅーーっと広がって
 地球をつつむぐらい広がって、広がりすぎて薄くなっちゃったものだから
 お母さんがいること少し感じにくくなってるけど、気をつけて見てごらん
 君の通る道にキレイな花が咲いてたり、気持ちのいい風が吹いてきたり
 鳥の美しいさえずりが聞こえてきたり、君が幸せを感じたらそれはきっとお母さんだよ」
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